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23年の『航空旅客需要』はコロナ前にほぼ回復へ

2023年6月15日

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世界の大手航空会社などが加盟する国際航空運送協会(IATA)は6月5日、年次総会で、2023年の旅客機の利用者数が43億5千万人と、コロナ禍以前の水準にほぼ戻る見通しを発表しました。需要の回復により、純利益は98億ドル(約1兆3,700億円)と、前回2022年12月発表の47億ドルから倍増する見通しに上方修正しました。地域差があるものの、航空業界の本格的な回復の道筋が見えてきました。

【ポイント1】23年の『航空旅客需要』は43.5億人

■国際航空運送協会(IATA)は、世界の航空会社のトップや政府高官、機体メーカー、メディアなどを集めて、トルコのイスタンブールで年次総会を6月4日から6日にかけて開催しました。


■このなかで同協会は5日、2023年の世界の『航空旅客需要』が43億5千万人に回復する見通しだと発表しました。これは、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年実績(45億4千万人)に対して96%の水準であり、コロナ禍以前の実績にほぼ戻る見通しです。2023年の売上高は前年比9.7%増の8,030億ドルと、2019年(8,380億ドル)以来の8,000億ドル超えを見込んでいます。



 

【ポイント2】23年の利益見通しは倍増

■また、同協会は、世界の航空会社による2023年の純利益予想が98億ドルになるとの見通しを示しました。前回2022年12月発表の47億ドルから2倍以上に上方修正しました。


■純利益の上方修正は、北米と欧州での需要急増で航空券価格が上昇しているのが主な理由です。地域別にみると、北米の純利益は115億ドル、欧州は51億ドル、中東は20億ドルを見込む一方、アジア太平洋は69億ドルの純損失、中南米は14億ドルの純損失、アフリカは5億ドルの純損失を予測しており、地域差があります。ただし、アジア太平洋は、中国のゼロコロナ政策などの影響が大きかった2022年の純損失135億ドルから大幅に改善する見込みです。

【今後の展開】世界的な需要増で航空業界の回復が期待される

■航空業界の事業環境は大きく改善しています。米国や欧州を中心に『航空旅客需要』が回復し、人手不足などによる影響もあって運賃が上昇していることから予想利益が上方修正されています。中国の渡航制限が予想より早く解除されたことや、燃油価格が落ち着きをみせていることも追い風となりました。


■こうした予想利益の上昇を背景に、米国株式市場では、旅客航空輸送業で構成する指数が、市場全体を表すS&P500種株価指数を、足元で大きく上回り、堅調に推移しています。


■同協会によれば、乗客を実際に運ぶ規模を示す、2023年の「有償旅客キロ(RPK)」は、世界で前年比28%増が見込まれています。地域別では、コロナの行動制限の緩和が進んだアジア太平洋地域が同63%増と、回復率が最も大きくなっています。


■インフレやウクライナ情勢の悪化などの懸念はあるものの、世界的に経済活動の正常化が一段と進展することで、旅行などのリバウンド需要を中心に、今後も『航空旅客需要』の増加とそれに伴う航空業界の利益回復が続くことが期待されます。

  


チーフリサーチストラテジスト
石井康之(いしい やすゆき)

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