ホームマーケット日々のマーケットレポート投資テーマから考えるポートフォリオ戦略 「預金していれば大丈夫」と思っていませんか? あなたの大切な資産を守るための「預金プラスアルファ」

「預金していれば大丈夫」と思っていませんか?
あなたの大切な資産を守るための「預金プラスアルファ」

2022年4月15日

1.「預金好き」と「景気停滞」で取り残される日本人

2.円安で目減りする虎の子の「預金」

3.大切な資産を守るための「預金プラスアルファ」

2,000兆円っていったい何の話?

昨年末に日本の個人金融資産が2,000兆円を超え、少なからず話題となりました。しかし、豊かになったと実感している方はごく僅かなのではないでしょうか。これは一部の富裕層に資産が集中しているからというよりは、「2,000兆円」という数字自体が「実はそれほどたいしたことがない」からかもしれません。「何をバカなことを」とお叱りを受けるかもしれませんが、冷静に今の日本をとりまく状況を見ていくと、2,000兆円という数字から受ける印象とは異なる日本の実像が浮かび上がってきます。

   


1.「預金好き」と「景気停滞」で取り残される日本人

■1999年末からの約22年間に、日本の個人金融資産は1,400兆円から2,000兆円へと約1.4倍に増加しました。この間、米国の家計金融資産(非営利団体を含む)は34.5兆ドルから118.2兆ドル(1京3,600兆円)へ、約3.4倍に増加しました。1999年当時の米国の家計金融資産は日本の約2.5倍と、人口比(2.2倍)に近い水準でしたが、現在その差は6倍を超えるまでに広がっています。


■日米間の金融資産の伸びにここまで差がついた背景には、金融資産に占める「現預金」と「リスク資産」のウエイトの違いがあると言われています。日本では個人金融資産の54.3%が、ほとんどリターンを生まない現預金に滞留していますが、米国では13.3%にとどまります。一方で、米国では株式や投資信託に計51.0%の資産が振り向けられていますが、日本では14.3%に過ぎません(いずれも2021年3月末、日本銀行調べ)。

■日本人の「預金好き」がリスク資産への投資の妨げとなり、多くの資産が「現預金」に放置された結果、米国人から見た日本人はどんどん貧しくなっていると言えそうです。


■「日本人が貧しくなったな」と感じているのは、アメリカ人だけではなさそうです。この20年ほど続いた景気停滞の結果、日本の一人当たり名目GDPは世界24位まで順位を下げ、現在はシンガポールや香港の後塵を拝しています(2020年、国際通貨基金調べ)。また米ドル建てで見た平均賃金でも、お隣の韓国に抜かれてしまいました(2020年、経済協力開発機構調べ)。


■コロナ禍前、インバウンド景気に沸き立つ銀座や心斎橋で外国人観光客が爆買いに興じていたのも、彼らから見て日本人が貧しくなったことが背景にありそうです。

2.円安で目減りする虎の子の「預金」

■海外の人々と比べて日本人が貧しくなっても、「海外旅行に行かずに日本で生活している限り気にならない」という方もいるかもしれません。果たして本当にそうでしょうか。


■私たちはエネルギーのほぼ9割を輸入に頼っています(2018年時点、自給率11.8%、資源エネルギー庁調べ)。また、食料自給率は37.2%に過ぎません(2020年時点、カロリーベース、農林水産省調べ)。海外で物価や所得がどんどん上がっているのに、日本の物価や所得がそれに追いついていかないと、輸入品の価格はどんどん値上がりして私たち日本人には手が届かなくなってしまいかねません。


■また、輸入品に限らず日本のモノが安ければ、海外から来た人がその安さに目をつけてどんどん買ってしまうため、輸入品以外の様々なモノも値上がりしやすくなります。「アジアの富裕層が日本の都心3区で億ションを買っている」という話をしばしば耳にしますが、これは日本の一等地にあるマンションが、シンガポールや香港だけでなく、上海、北京、台北などよりも安くなっていることがその背景にあります。特に、最近のように円安が続く状況では、輸入品以外でも値上がりとは無縁という訳にはいかないようです。

 


通帳の残高は減らないけれど…

■日本と比べて海外の国々がどんどん成長し、物価が上がり、そして給料も上がっていくと、私たちの円の価値(購買力)はどんどん失われていきます。そして、こうした流れに円安が加わると、その傾向に拍車がかかることになります。貿易量や物価を加味して「円の実力(購買力)」を測る実質実効為替レートを見ると、この10年間で円の価値は3割以上も低下しています。

■例えば、10年前に退職金2,000万円を全額銀行預金とし、その後10年間まったく手をつけなかったとします。預金通帳の残高は2,000万円で変わりはありませんが、海外の人たちから見たこの預金の価値は、10年前に比べて640万円以上減少している計算になります(2012年4月から2022年4月までの実質実効為替レートの低下幅▲32.25%)。


■通常はお金の価値が下がると(インフレになると)預金金利が上昇し、価値の減少を多少なりともカバーしてくれます。しかし、今の日本は預金金利が上昇するような状況にはありません。このため、今後も現在のような傾向が続くようであれば、「虎の子の預金」の実質的な価値がどんどん目減りしてしまう危険性を、意識せざるを得ないのでしょう。

3.大切な資産を守るための「預金プラスアルファ」

■預金だけでは私たちの大切な資産を守れないとしたら、どうすれば良いのでしょうか。一つの解決策は、「預金プラスアルファ」として預金の一部をリターンが期待できるリスク資産に投資して、その収益で実質的な目減り分を穴埋めすることです。


■とはいえ「投資」と聞くと、「少しでも損をするのは我慢ならない」という方も少なくないのではないでしょうか。しかし、こうした「投資アレルギー」の方でも、実は普段意識をしていないだけで、リスク資産への投資を直接・間接的に行って、様々な経済的利益を享受しています。

 


知らず知らずのうちにやっているリスク資産への投資

■例えば、多くの方が加入している生命保険ですが、保険会社は私たちから受け取った保険料を元手に内外の株式や債券に投資しています。こうしたリスク資産への投資を通じて保有資産の価値を維持・向上させることで、いざという時の保険金支払いに備えているのです。


■住宅購入も、ある種の資産運用と言えるのではないでしょうか。バブル崩壊前は、日本人にとって最も馴染み深く、かつリターンも大きい資産運用でした。「ただ住んでいるだけ」という人もいますが、購入金額の7~8割を借り入れで賄い、年収の何倍もの価値の不動産を購入するのですから、ひとたび値下がりすれば大変なことになりかねません。いわゆる「レバレッジ」のきいた、結構ハイリスクな投資とも言えそうです。


■また、会社員の皆さんの退職金や企業年金も、支給日に備えて勤め先の会社(確定拠出型年金であればご自身の裁量で)がリスク資産を活用して資産運用をしているのは、ご存知の通りです。


■そしてもう一つ忘れてならないのは、預金は経営状況によっては倒産することもある「金融機関」という企業への貸し付けであり、「一種の投資でもある」ということです。

  


「預金プラスアルファ」その1
同じ銀行でも預金以外の投資を考える

■現在、定期預金の金利は主要各行ほぼ横並びで、期間に関わらず年率0.002%ですが、預金と同じく金融機関の信頼に基づく投資を行うなら、他にもっと利回りの高い選択肢があります。


■例えば、大手邦銀が発行する円建て社債の利回りは、平均で0.589%(メガバンク3行、残存期間4~7年)、米ドル建てなら同3.853%になります。また、こうした金融機関の発行する株式を買うと、その配当金利回りは平均で4.755%にもなります。


■日本では様々な企業が社債を発行していますが、中には銀行よりも高い格付け(信用)の会社もあります。そして、社債発行企業の信用力に応じて、様々な利回りの社債が流通しています。株式のような価格変動リスクが高い資産に及び腰な方なら、元本を棄損するリスクが比較的限られる社債や、多くの社債に分散して投資する投資信託は「預金プラスアルファ」の投資対象として検討する価値がありそうです。

 


「預金プラスアルファ」その2
海外への「出稼ぎ」で世界経済の成長に乗る

■日本人が貧しくなってきたそもそもの原因は、経済の停滞が長く続いてきたことです。日本では今後も高齢化が進む一方、海外では新興国を中心にまだまだ若く貧しい人たちが多くいて、豊かな生活を渇望して日々奮闘しています。そして、テクノロジーの進化がこうした国々にも広く伝わることで、世界経済の成長は今後も継続する可能性が高そうです。このため、日本と世界の成長率格差は、なかなか縮まらないと考えておいた方が良さそうです。


■そこで「預金プラスアルファ」の2つ目として考えたいのが、私たちの代わりにお金に働いてもらうこと、特に成長率の高い海外の国に「出稼ぎ」してもらうことです。


■銀行預金の一部を米国や新興国などに振り向けるだけで、たとえ待機資金でも金利がつくことが期待できます。そして、世界経済の拡大に乗って成長する外国企業に投資することで、そのリターンが私たちの資産の購買力を維持してくれるのです。中でも、海外の成長株や、多くの海外成長株に分散して投資する投資信託は、その成長力の高さから「預金プラスアルファ」を考えた場合に、重要な投資対象と言って良さそうです。

  


「預金プラスアルファ」その3
投機ではなく投資を

■これまで投資により資産の実質的な目減りをカバーする方法を考えてきましたが、1点注意していただきたいことがあります。それは、短期的な相場の変動に一喜一憂する「投機」ではなく、あくまでも長期的な視点からの「投資」を実践していただきたい、ということです。


■短期の相場に賭ける「投機」はゼロサムゲームとも呼ばれ、市場参加者が賭け金を奪い合う賭博的な性質を否定できません。このため、リスクに見合ったリターンを期待することが難しく、長い目で見た資産形成には不向きだからです。


■資産価値を守るための「投資」にとって大切なのは、長期の視点でリスクに見合ったリターンが期待できる投資対象を選び、投資先を分散することでポートフォリオ全体のリスクを下げ、そしてリターンを追加投資する複利の資産運用を行うことです。いわゆる「長期・分散・複利」の投資を実践することで、投資資産は雪だるま式に積みあがり、私たちの資産の実質的価値を長期にわたって守ることが可能になるのです。

 


まとめに

円高・デフレの時代、なるべく借金はせず預金をすることが、資産を守る上で合理的な投資行動であったかもしれません。一方、バブル崩壊前の日本では、できるだけ多く借金をして不動産を購入することが、最も有利な資産運用の一つでした。このように、経済環境の変化で有利な投資行動は常に変化しており、これからも変わっていく可能性が高そうです。


弊社では、世界的なインフレ傾向は年後半には徐々に落ち着いてくるものと見込んでいますが、仮に現在の高インフレが続き、円安が進み、更には日本の経常収支の赤字が定着するようなことがあれば、預金一本やりでは私たちの資産を守ることはますます難しくなってくるでしょう。


今後の日本や海外の経済環境を考えると、預金と「長期・分散・複利」の賢い長期投資を組み合わせることが、かつてなかったほど重要になってきている、と言えそうです。

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